風情漂う歴史的木造家屋でいただくお蕎麦 手打ち蕎麦 やぶ金
福岡のファッション文化の発信地である中央区大名にある情緒溢れる佇まいの【手打ち蕎麦 やぶ金】。
昭和11年に建築された松楠居(しょうなんきょ)。老舗ジョーキュウ醤油の私邸として、腕利きの大工を呼び、構築された家屋だ。その風情漂う門構え、玄関の遊び、庭園の眺め、細かな縁取りの細工に至るまで、すべてが清廉とした空気を醸し出している。この一角だけまるで時間の流れが異なるかのように静かで奥ゆかしい。
そんな都会の真ん中にありながらも喧噪を一切感じない、静寂な設えでいたく絶品の蕎麦を紹介したい。
大将は、後藤好宏(ごとうよしひろ)氏。20代後半から一念発起して蕎麦の勉学と修行に励んできた。恩師の教えのもと、多くの同志たちと学び、ひたむきに蕎麦職人としての道を歩んできた大将。今現在も「前に進むしかない」という信念のもと、蕎麦に真摯に向き合う日々を送る。
店の要となるそば粉は、時期に応じて大将自ら厳選した産地のものを使用。長崎産(五島列島)、熊本産、鹿児島産、宮崎産(えびの)など、九州を中心に仕入れている。その年の出来で、蕎麦の質が変わることがないように細心の注意を払っている。また、つゆに使用する鰹節は鹿児島の山川産だ。
長年蕎麦職人として携わってきたなかで、大将が導き出した独自の配合はそば粉10に対しつなぎ1.5だという。ただ、季節によってそば粉の状態を見て、湿気や気温により水を足したり引いたりを繰り返すので「勘」がもっとも重要な部分を占めているといえよう。
手間を惜しみなく費やし、気持ちをこめて作られる手打ち蕎麦 やぶ金の一品。時代を経てきた伝統的な和の空間で、その想いを受け取りながら蕎麦のうま味や深みをじっくりと味わってほしい。
また、営業時間は11時から21時(ラストオーダー20時30分)まで。近年では珍しく1日中オープンしている。これは、仕事がはやくおわってお酒を飲みたいと思うビジネスマンにいつでも立ち寄ってもらえる場所でありたいとの大将の粋な心意気からだ。蕎麦以外にも、肴にはもってこいのメニューが揃う。大人たちが集うとっておきの場所として長くあってほしいと願わずにはいられない貴重な蕎麦屋だ。
writer:Chie