本物の日本料理を知るために
京都で日本料理を味わうことの大切さを解く
Q、料理をする上で大切に考えていることは。
『素材はいじりすぎない方がいい』
料理は単純なほうがいいというのが、私の一番大事にしている信条でございます。ですから、料理法に工夫を重ねると申しましても、それは下処理によって生臭みを取り、素材本来のよさを引き出すことが主眼であり、余計な飾り付けなどをせず、持ち味を生かして極力ストレートに仕上げるのが本来のお料理のあるべき姿だと思います。女性に例えるなら、素肌のお手入れも行き届いておられない方が、ファンデーションを厚く塗り、その上から、取って付けたような眉を描き、まつ毛にはマスカラを塗り重ねと、コテコテに飾り立てるようなものでございます。
大切なのは、基本的な手入れでございます。素肌美人こそがほんとうの美人なのではないでしょうか。全く和食も同じことがいえます。
素材の持つ本来の美味しさを生かすには余計なことはしない、これに尽きます。そのためには「味をつけすぎない」ことが根本的に大事になってまいります。お食事をされた後、「美味しかった」ということだけが頭に残って、お口には味がなんにも残らないほうがよろしいのです。